急性呼吸器感染症(ARI)サーベイランスの概要
令和7年(2025年)4月7日から、急性呼吸器疾患(Acute Respiratory Infection: ARI)が感染症法上の5類感染症に位置付けられ、全国で定点サーベイランスが開始されました。
急性呼吸器感染症(ARI)とは
- 急性上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎)または下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群です。
- インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、RSウイルス、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナ、一般的な風邪などが含まれます。
症例定義
- 咳嗽(がいそう)、咽頭痛、呼吸困難、鼻汁、鼻閉のいずれか1つ以上の症状を呈し、
- 発症から10日以内の急性的な症状であり、
- 医師が感染症を疑う外来患者
※発熱の有無問はありません
ARIサーベイランスの目的
- 流行しやすい急性呼吸器感染症の発生動向の把握
- 未知の呼吸器感染症が発生・増加し始めた場合の迅速な探索
- 国民や医療関係者への情報共有体制の整備
ARI定点とは
- これまで「インフルエンザ/COVID-19定義点」と呼ばれていた医療機関が「急性呼吸器感染症定義点(ARI定義点)」に名称変更されました。
- ARI判定点は、内科判定点と小児科判定点で構成されます。
- 各都道府県が指定し、規模に応じて数が調整されています。
報告・検体提出の流れ
- ARI 定義点医療機関は、症例定義に該当する患者数を週単位で報告します。
- 患者ごとの個別報告(発生届)は不要です。
- 病原体特定点医療機関は、週の初めから数えて第2日に受診した該当患者のうち、最初の5検体を目安に提出します(主に鼻咽頭拭い液など)。
- これにより、流行中の病原体や感染症の初期検出も目指しています。
患者や医療機関への影響
- サーベイランスの開始により、患者の配慮・出勤制限や特別な生活制限はありません。
- 医療機関は、診療内容や検査の運用を大きく変更する必要はなく、定点報告のみが求められます。
急性呼吸器感染症(ARI)統計データの企業での活用方法10選
1.必要予測・販売戦略の最適化
感染症流行期の予測に基づき、マスクや消毒液、医薬品など関連商品の在庫調整や販売促進を計画できる。
2.従業員の健康管理・出勤方針の策定
地域ごとの感染状況を把握し、リモートワークや臨時出勤の導入など、従業員の安全を守るための方針決定に活用できる。
3.医療機関向けサービス・製品の開発
流行している病原体や症状の傾向を分析し、医療機器や検査キット、診断支援システムの開発に集中できる。
4.サプライチェーンのリスク管理
感染症の流行による物流の滞留や必要な変動リスクを事前に把握し、サプライチェーンの強靭化を図る
5.マーケティング戦略の発想
感染拡大時に変化する消費者の行動(例:外出自粛、EC利用増加)を統計から読み取り、広告や販促活動を最適化する。
6.医薬品・ワクチン開発の研究データとして利用
病原体別の流行状況や患者属性データを活用し、創薬やワクチン開発の目標設定や臨床試験に並行して計画する。
7.リスクコミュニケーション・顧客対応
最新の感染状況をもとに、顧客や取引先へのリスク説明やFAQの作成、問い合わせ対応の質向上に活用できる。
8.保険商品の設計・リスク評価
感染症の発生頻度や重症化率のデータをもとに、医療保険や休業補償保険などの商品設計や保険料見積りに活用できる。
9.地域課題解決型サービスの開発
地域ごとの感染状況や医療体制提供データを活用し、自治体や医療機関向けのコンサルティングやITサービスを展開できる。
10.新規ビジネスモデルの創出
感染症流行に伴う社会変化(例:非接触サービス、遠隔医療、健康管理アプリ)を統計データから読み取り、新たな事業領域を開拓できる。
まとめ
令和7年4月7日から始まった急性呼吸器感染症(ARI)サーベイランスは、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症を含む急性呼吸器感染症の発生動向を把握し、未知の感染症の早期発見や情報共有を目的としています。これらの活用は、厚生労働省が決定条件を満たせば企業にも認められており、ビジネスの意思決定や新規事業開発、社会貢献に幅広く応用できます。
感染拡大をいかに防止していくかが今後の課題です。
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