近年、日本全国で診療所の廃業が急速に増加しています。2024年には医療機関の倒産が64件、休廃業・解散が722件と、いずれも過去最多を記録しました。特に診療所の休廃業・解散は587件で、全体の81.3%を占め、歯科医院とともに過去最多となっています。この傾向は2025年に入っても続いており、有床診療所の減少ペースも加速しており、2026年2月には5000施設を割り込む可能性が高いと指摘されています。
急増の背景と主な要因
経営者の高齢化と後継者不足
• 診療所経営者の54.6%が70歳以上であり、後継者がいないケースが半数以上に上ります。
• 子どもが医師であっても診療科の違いや都市部志向などから継承されないケースが増加しています。
経営環境の悪化
• 新型コロナウイルス流行による受診控え、コロナ関連補助金の削減、材料費・人件費の高騰、融資返済開始などが経営を圧迫しています。
• 設備更新や人材確保への投資が困難となり、サービス品質の低下やスタッフ離職、さらに患者減少という悪循環に陥る診療所も少なくありません。
立地条件の悪化・競争激化
• 駅から遠い、周辺に競合が多いなど、立地条件が悪い診療所は患者確保が難しくなり、経営難に直結しています。
地域社会への影響
診療所の廃業は、地域医療に深刻な影響を及ぼします。
• かかりつけ医を失うことで、特に高齢者や慢性疾患患者の不安や負担が増加します。
• 医療従事者の雇用喪失が発生し、医療現場の労働力不足が加速します。
• 他の医療機関への患者集中による医療費増加や、医療アクセスの悪化が懸念されます。
• 無床診療所の廃業は住民の医療アクセスを著しく悪化させ、遠方への通院を余儀なくされるケースも増えています。
今後の見通しと課題
診療所の廃業は今後も高水準で推移することが予想されています。高齢化の進行と後継者不足が解消されない限り、経営難による廃業はさらに増加する見込みです。このままでは地域医療の持続可能性が脅かされるため、診療所の経営基盤強化や医業承継支援、働き方改革など抜本的な対策が求められています。
診療所の廃業加速は、単なる経営問題にとどまらず、地域社会全体の健康と安心を揺るがす重大な社会課題となっています
診療所の廃業が急加速する現状
